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2008-02-02

「人生、宇宙、すべての答え」は?

以下の文章は、大学のとある講義(日本のメディア産業の仕組みついての講義)の最終課題、「人生、宇宙、すべての答え」は?で書いた、ワタクシの文章。


    この街の池に はすの葉がひらく
    夏の星座をうけとめるように
    それはまるで パラボラのようで
    見えないものを信じることを教える

 この詩は私の尊敬する槇原敬之さんの「CLASS OF 89」という曲の一節です。この一節は数ある槇原さんの詩の中でも、人生と宇宙がリンクして広がって行く感じを受け、「見えないものを信じること」というすべてに対する答えを表しているような気がして、はじめて聞いたときから心うたれました。

 この曲が書かれた1993年当時は、携帯電話も普及していなかったし、インターネットの存在すらほとんどの人が知らない頃でした。テレビやラジオは普通に普及してたとはいえ、その送信所は地上に見える鉄塔から。通信と言えば固定電話であり有線方式だから、その詳しい方式は知らないとしても、「感覚的に」わかる技術によって放送や通信が行われていたのだと思います。しかし、「パラボラアンテナ」という、大変滑稽な形でありかつ、神秘的な形をしたもので受信する衛星放送にであったとき、送信所(正しくは中継所ですが)が見えない宇宙にあるという壮大さと、見えないものでもしっかり受け止められるものがあるという勇気を、我々に与えてくれたのだと思います。

 学校の通学路、パラボラアンテナをつける家がどんどん増えて行く小学校時代を送った私はそれを鮮明に覚えています。槇原さんは日常のなにげない変化や感覚を例えにつかって歌っていく人なので、そんな感覚がいち早く盛り込まれたのがこの曲なのです。「星座を受け止めて開く蓮」という宇宙的感覚をパラボラアンテナで例える、というこの詩は、それだけパラボラアンテナの出現が神秘的であったことを意味しています。

 槇原さんの曲は一曲がある物語になっているものが多く、この曲も例にもれずそういうつくりになっています。この曲の主人公の彼は、大学時代に友達だった女性から一通の手紙をもらいます。彼は実はその彼女に思いを寄せていたのですが、その手紙には「来年には結婚する」という文字が。彼は大学時代の夏休みに、彼女と一緒に花火を見に行った事を思い出します。おそらく、お互いに思いを寄せ合っていたのでしょうが、「好きだ」と言えず、でもなんとなく一緒にいる仲間同士だったのです。それから2年が経っていて、彼は「彼女からの最後の手紙は僕に対するエールだ」と胸に刻んで、大学時代の思い出を胸にがんばろうと思い直します。

 好きだと言わなくても、言われなくても、お互いわかっていたのです。それが「見えないもの」であって、それを信じ合っていたのです。それなのに、「結婚」という見える形におさまってしまった彼女をなげいて彼はサビの部分でこう歌います。

   

  どうして君は 僕のことを
    追い越して行ったの?
    四年も二人 通った場所が
    嘘になって行く


 「追い越した」という表現にも見られるように、一貫してこの曲では、見えないものを信じられなくなってしまったとき「大人」になってしまうと説いているのだと、私は解釈しています。ただし、ここでいう「大人」とは決して良い意味では使われていないのですが。

 こういうふうに考えられるようになったのは、ごく最近のことです。私は大学に入ってから「現代音楽の作曲」を勉強するようになって、「今」を表現すべき曲を考え、作曲を続けています。現代音楽の、無調でありメロディーも無いような音楽をつくることは、自分で生み出した何らかしらの秩序に基づいて曲をつくりあげていく、「今の自分との対話」のような感覚を覚えます。それは、例えば利益を追求したり、権威にすがりついて、売れるような音楽を書くのとは全く反対の行為で、ともすると子どもの奏でるでたらめな演奏と一緒になってしまうかもしれません。それが芸術になりうるかどうかは紙一重でそこを上手く見極める必要があります。大学生活半ばを過ぎ、もうすぐ卒業が目に見えて来て、ふと我にもどって考えると、大学生であるからこれを悠々とできるのであって、これからの自分の人生においては、どっちをいくべきなのか迷うのです。芸術の高みを目指すのか、商業主義に走るのか。自分の本当になりたい方はどっちなのか。

 去年の5月から8月にかけて、「窓に映る宇宙」という2台ピアノのための曲を書きました。これは、槇原さんの言う「見えないものを信じること」をもう少し大きく解釈して、「聞こえないものを信じる」ということがテーマでした。宇宙には天体がたくさんあり、それは音もたてずに回り続けていて。宇宙という無音の世界にある、莫大なエネルギーを音に変換するということをしてみました。見えないもの、聞こえないものを信じ続けることをやめれば、自分が自分でなくなってしまうのです。まだ見えないものがあると信じているからもっと遠くをみたくなる宇宙と同じように、新しいものをみたいと思う気持ちこそ、「見えないものを信じる気持ち」であり、それが何かを生み出す原動力であり、すべてが忘れてはいけない心なのです。

『窓に映る宇宙』(8/6オープンキャンパス 音楽棟合唱ホールにて)
http://tatsuto.way-nifty.com/blog/video/muu.wmv

『CLASS OF 89』
 9thシングル「彼女の恋人」のカップリング
 詩は、「槇原敬之詩集」ぺんぎん書房(絶版)にも収録。

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