【教えたいシリーズ】「楽典」を知識としてではなく実感するために
4日連続読んで下さって、ありがとうございます。今日は当ブログのタイトルにもあります「楽語」とか、「楽典」の勉強の仕方について書いてみたいと思います。
10/11 Max/MSPとは?読むだけで使いたくなる解説
10/12 音楽史〜現代アート・現代音楽はなぜ生まれたか〜
10/13 MIDIとデジタルオーディオは何が違う?
10/14 「楽典」を知識としてではなく実感するために
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音楽を勉強している人で、”楽典”と聞くと「うっ…!」となる人が少なくないかもしれません。「どうも覚えられない」、「実技に時間をとられてやってる暇がない」などと様々な思いがあることでしょう。
「楽典 理論と実習」音楽之友社。通称「黄色い楽典」
「楽典」をご存知ない方の為に説明しますと、ぶっきらぼうに言えば「音大に入るための受験科目」ですが、それ以上に「音楽の文法を記した教科書」と言えます。
「日本語文法」を中学校国語の時間に習ったのを覚えていますか?国語は得意だったのに、文法は何故か苦手だった…という人は、こう考えることをオススメします。「楽典」は(=文法は)、数学や物理などと同じ、理系科目の勉強である、ということです。つまり、定義を覚え、それを応用するということの繰り返しなのです。
楽典も文法も、暗記教科だと思っていると苦手意識が増大します。楽典が難しく感じられる理由は「暗記しなければいけない部分(定義の部分)」と「暗記すべきではない部分(応用の部分)」の区別が付きにくいからです。区別が付きにくいのは、「音楽」がとても複合的な要素から成り立っているものだからです。
しかし、それをはっきり区別し、まず基本をおさえるところからはじめれば、大変効率よく勉強することが出来るはずです。
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まず、楽典で扱う内容を整理してみましょう。黄色い楽典の目次を開いてください。
序章・・・「音」そのものについて
第1,2章・・・楽譜や音符について
第3章・・・リズム・拍子について
第4章・・・音程について
第5章・・・音階(調・調号)について
第6章・・・和音について
第7,8章・・・音楽用語について
第6章までが「理論」の部分で、第7,8章はひたすら「暗記」する部分です。
赤で印を付けた「ここだけ覚えてしまえば、後は簡単になる!」という部分のみを解説します。それでは、「音楽用語」、「音符」、「調・調号」、「音程」の順に解説します。
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<楽語ゴロを用いた「音楽用語掃討作戦」(楽典第7,8章)>
音楽用語(楽語・がくご)は楽典の最後に載っているので勉強がおろそかになりがちです。まずは暗記すべき「楽語」を片付けてしまいましょう。
楽語は基本的にイタリア語です。ローマ字読みすれば、だいたいその通りの発音でOKです。英単語を覚えるように、発音しながら書いて意味を確認することを繰り返しましょう。
「楽語.com」では、楽語を覚えるのを助けるために、Flashを用いた教材「楽語ゴロ」を公開しています。
「legato(レガート)」とか「crescendo(クレッシェンド)」などと言った、よく耳にする楽語は徹底的に外し、第7,8章に登場する楽語を89個に厳選しました。7日間で覚えきることができるよう、曜日分けして公開しています。
例えば、土曜日に出てくる「serioso(セリオーソ。意味:厳しゅくに)」のゴロを紹介しましょう。
楽語ゴロのページはこちらです。暗記を憂鬱に思わず、楽しく勉強してください!
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<音符〜音の名前を覚える〜(楽典第1章)>
さて、では理論の部分です。楽典第1章は、「音楽を扱うに当たって、こういうふうに決めました」という定義の説明部分です。すべて覚えることが望ましいですが、最低でもここで紹介することは覚えておきましょう。(ちなみに、臨時記号や音符についての基本的な説明は省略します。)
1)「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」を日本語で言うと、
「ハ・ニ・ホ・ヘ・ト・イ・ロ・ハ」です。
2)ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ドをドイツ語で言うと、
C(ツェー) D(デー) E(エー) F(エフ) G(ゲー) A(アー) H(ハー) C(ツェー)です。
英語の「A(エー)」とドイツ語の「E(エー)」を取り違えないように注意しましょう。
3)各音の#はそれぞれの後に-is(ィス)を付けて、
Cis(ツィス) Dis(ディス) Eis(エイス) Fis(フィス) Gis(ギス) Ais(アイス) His(ヒス)です。
4)各音の♭はそれぞれの後に-es(ェス)を付けて、
Ces(ツェス) Des(デス) Es(エス) Fes(フェス) Ges(ゲス) As(アス)で、
Hの♭のみ、「B(ベー)」になります。
英語の「B(ビー)」は「シ」を表すので取り違えないように気をつけましょう。
5)各音の×(ダブルシャープ)は-isis(ィシィス)(例:Cisisツィシィス) 、
♭♭(ダブルフラット)は-eses(ェセス)(例:Cesesツェセス)になり、
Hのダブルフラットのみ「BB(ベーベ)」です。
音名のドイツ語読みは、これからたくさん使います。すらすらと出るように、音符をドイツ音名で歌うなどして、早く慣れましょう。
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ピアノをやっているみなさんは「ト音記号」、「ヘ音記号」は見慣れていると思います。それぞれの名前の通り、ト音記号は「ト(=G)」の位置を(書き始めをG)、ヘ音記号は「ヘ(=F)」の位置を(2つの点を挟む線をF)表します。

ハ音記号もその名の通り、二つのくねりの中心に来る線を「ハ(=C)」とする記号です。

そのハ音記号の中心が第3線上にある譜表を「アルト譜表」と呼び、第4線上にある譜表を「テノール譜表」と呼びます。
ちなみに五線の数え方は一番下が「第1線」、一番上が「第5線」です。では、忘れないようにゴロで覚えましょう。
「アルトさん、テノールに「しーっ」て言って?」
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<調・調号〜まず長調を完璧に!〜(楽典第5章)>
次に、音楽における「調」という概念を勉強しましょう。10/12の音楽史の話の中でも書きましたが、「調」は音楽の中で対比を生み出し、緊張感を作るためにつくられた「システム(「構造」とか「制度」と言っても良いでしょう)」です。
調には2種類「長調」と「短調」があります。長調で曲をつくると「明るい感じ」に、短調で曲をつくると「暗い感じ」になるようになっています。
そのシステムを音符で表したものが「音階」です。
上が「Cから始まる長調(=ハ長調)」、下が「Cから始まる短調(=ハ短調)」です。それぞれを聞いてみましょう。
聞いてみましょう〜Cから始まる長調
聞いてみましょう〜Cから始まる短調
さて、ここで2つ覚えることがあります。
1)長調のことをdur(ドゥアー)と言い、 短調のことをmoll(モール)と言う。
「ハ長調」を「C dur(ツェー・ドゥアー)」。「ハ短調」を「c moll(ツェー・モール)」と言います。
例:G dur(ゲー・ドゥアー)=ト長調
h moll(ハー・モール)=ロ短調
※長調の場合は大文字で、短調の場合は小文字で表記します。
また、「G:」と書くとG durを意味し、「h:」と書くとh mollを意味します。
2)音階の始めの音を「主音(しゅおん)」、5番目の音を「属音(ぞくおん)」、4番目の音を「下属音(かぞくおん)」、7番目の音を「導音(どうおん)」と言う。
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さてここで、「Cから始まる・・・」と書いてあることに気づいてください。実は、どの音から始めても良いのです。例えば、「Dから始まる長調」(=D dur)を作ってみましょう。
こうなります。Dからはじめても「ドレミファソラシド」と聞こえるようにするため、臨時記号をつけました。
聞いてみましょう〜D dur
このように、C以外の音からはじまる長調を作ると、臨時記号が付きます。どうせつくなら、それを左側にまとめてしまえ!と考えられたのが「調号」です。以下に示すのは長調の調号です。
上段が#系、下段が♭系と呼ばれています。さて、この調号は全て覚える必要があるのですが、ある法則にのっとって出来ているので、その法則を覚えましょう。
1)#系の長調の場合
イ、C durの音階を書く
ロ、属音(5番目の音)の「G」から音符を並べ直す
ハ、並べ直した7番目の音を調号として「#」をつける
これでG durの完成。この調子で繰り返していきましょう。もう一度だけ、繰り返してみます。
これでD durの完成です。これで、調号の表・上段のC→G→D→A→E→H→Fis→Cisという順に音を導き出すことができるのと同時に、調号が分かります。
2)♭系の長調の場合
イ、C durの音階を書く
ロ、下属音(4番目の音)の「F」から音符を並べ直す
ハ、並べ直した4番目の音を調号として「♭」をつける

これでF durの完成。では、もう一度繰り返します。
これで、B durの完成です。これで調号の表・下段のC→F→B→Es→As→Des→Ges→Cesという順に音を導き出すことができるのと同時に、調号が分かります。
すらすらと調号と音階が書けるようになるまで五線に向かって手を動かして訓練しましょう。これには時間をめいっぱいかけてください。
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<音程〜音と音の隔たりを数えるゲーム〜(楽典第4章)>
楽典最大の難関「音程」です。が、調号と音階が完璧に出来ていれば、実は楽勝です。
「音程」とは、「2つの音のピッチの距離を表した数字」のことです。単位は「度」です。
例を挙げて説明しましょう。音程を表す言葉である「オクターブ」という言葉を使って説明します。下の楽譜をご覧下さい。

両方「C」です。この2音は「1オクターブ離れています」。では、次の楽譜をご覧下さい。
それぞれ「C」、「F」、「Es」、「Ais」です。赤と黒のペアはそれぞれ「1オクターブ離れています」。このように、音が違っても距離は一緒だから、「1オクターブ」という同じ言葉で距離を言うことが出来ます。
さて、「オクターブ」の場合は分かりましたが、2音が異なる音だったらどうなるでしょうか?・・・音程の問題は、このような感じで「音と音がどれだけ離れているかを言い当てるゲーム」だと思ってください。
それでは、定義(ゲームルールの説明)です。とりあえず、これだけを覚えて取りかかってみましょう。
| (低−高) | 度数 | ゴロ | イラスト |
|---|---|---|---|
| ド−ソ | 完全5度 | 「土足!」「誤解だ!」 | ● |
| ド−ファ | 完全4度 | ヨン様が三枝のマネする。ドファ〜笑 | ● |
| ド−ミ | 長3度 | 「どう?ミーは」「長さんでしょ?」 | ● |
| ミ−ソ | 短3度 | 味噌に単三電池入れる | ● |
| ミ−ド | 短6度 | ミドが単六電池握る | ● |
| ド−ラ | 長6度 | ドラえもん、超録画してぇ! | ● |
実際の問題に挑戦です。
(1)「ミ−ド」なので、表より「短6度」。
(2)「ド−ミ」なので、表より「長3度」。
(3)「ソ−レ」という表にないものがでたとき…
イ、下の音「ソ」から始まる長音階を作る。

ロ、この音階の最初の音を「ド」と読み替えると、「ソ−レ」=「ド−ソ」
ハ、表より「ド−ソ」を見て、「完全5度」。
(4)「ラ−レ」は、また表にないので・・・
イ、「ラ」から始まる長音階を作る。

ロ、この音階の最初を「ド」と読み替えると、「ラ−レ」=「ド−ファ」
ハ、表より「ド−ファ」を見て、「完全4度」。
(5)「ラ♭−ド」は表にない。
イ、「ラ♭」から始まる長音階を作る。
ロ、「ラ♭」を「ド」と読み替えると、「ラ♭−ド」=「ド−ミ」
ハ、表より、「長3度」。
(6)この問題は、やってみましょう!答えは「あとがき」にて。
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今回の説明はここまでです。この後には、以下のものを説明しなければいけませんが省略します。ただ、ここまで説明した部分を完全に理解し、素早くできるようになれば、以下に羅列するものは、すんなり理解することができるでしょう。
音程
↓・半音広がったとき、狭まったとき(完全系・長短系の説明)
↓・転回音程
調
↓・短調の調号は、短3度上の長調(平行調)
↓・調号の付き方の意味(五度圏)と、属音・下属音・導音の意味
↓・短調の3種類(自然短音階、和声短音階、旋律短音階)
↓・教会旋法のつくりかた
和音
↓・和音の種類(名前)と、その音程関係と響き
↓・音階の機能と、和声の意味
リズム
・大半は実技のレッスン時に身につく事柄です。
あえて触れるとすると・・・「L'istesso tempo(リステッソ・テンポ)」、「syncopation(シンコペーション)」、演奏時間の計算問題など。
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「楽典」を勉強したことがある方は、このような順序で楽典を勉強することは「まわりくどい」と思うかもしれません。しかし、本当に楽典が音楽の理論として実感できるための最短距離を私なりに考えた結果、このようになりました。
勉強することにおいて一番残念なことのは、「勉強したけど忘れてしまった」という状況になることです。たとえ忘れたとしても、思い出せるような覚え方をするのがいいと、私は思っています。「楽語ゴロ」についても、必死に勉強したわりには、受験後は忘れてしまった…では意味がないので、インパクトの強い方法でもって覚えてほしいという気持ちから作りました。
実技の練習において「譜面をよめるようになる」ところから「ちゃんと弾けるようになる」まで時間がかかるように、楽典おいても「知識」が「実感」になるまでは時間が必要です。よい練習方法がよい演奏を生むように、楽典においても基本を押さえた「良い勉強」が、楽典攻略の第一歩です。音大生ブログRankingに投票!
河合達人
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あとがき(閉じていますので、「続きを読む」をクリックしてご覧下さい)
4日間、【教えたいシリーズ】を読んでいただきまして、ありがとうございました。4回に渡り、「音楽」における異なった分野の説明を行いましたが、書こうとすると、それぞれが交互にリンクし、どれも切り離せないことに気づき、音楽の奥深さを感じているところです。
感想を寄せてくださった方、本当にありがとうございます。引き続きこれからもどしどし募集中です!もちろん、音楽を専門にしていない方からも、貴重なご意見お待ちしております。このシリーズを書き進めていくことで、また、意見をもらったことで、文字だけではなく対面で教えたいという気持ちがより強くなりました。
教えたいという思いは、ともすると偉そうに見えてしまうことがあると思います。文章を書くに当たって、「謙虚に」という言葉を頭に置いて、推敲を重ねました。教えるということは、同時に自分自身の勉強でもあるので、これからも成長をしていきたいと思います。
各回それぞれに「あとがき」を追加しましたので、そちらもぜひお読み下さい。感想はぜひこちらからお送り下さい。ありがとうございました。河合達人
(6)の答え:完全4度(シ♭から始まる長音階の4番目が「ミ♭」。「シ♭−ミ♭」=「ド−ファ」)
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