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2008-10-14

【教えたいシリーズ】「楽典」を知識としてではなく実感するために

4日連続読んで下さって、ありがとうございます。今日は当ブログのタイトルにもあります「楽語」とか、「楽典」の勉強の仕方について書いてみたいと思います。

10/11 Max/MSPとは?読むだけで使いたくなる解説
10/12 音楽史〜現代アート・現代音楽はなぜ生まれたか〜
10/13 MIDIとデジタルオーディオは何が違う?
10/14 「楽典」を知識としてではなく実感するために

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音楽を勉強している人で、”楽典”と聞くと「うっ…!」となる人が少なくないかもしれません。「どうも覚えられない」、「実技に時間をとられてやってる暇がない」などと様々な思いがあることでしょう。

楽典「楽典 理論と実習」音楽之友社。通称「黄色い楽典」

「楽典」をご存知ない方の為に説明しますと、ぶっきらぼうに言えば「音大に入るための受験科目」ですが、それ以上に「音楽の文法を記した教科書」と言えます。

「日本語文法」を中学校国語の時間に習ったのを覚えていますか?国語は得意だったのに、文法は何故か苦手だった…という人は、こう考えることをオススメします。「楽典」は(=文法は)、数学や物理などと同じ、理系科目の勉強である、ということです。つまり、定義を覚え、それを応用するということの繰り返しなのです。

楽典も文法も、暗記教科だと思っていると苦手意識が増大します。楽典が難しく感じられる理由は「暗記しなければいけない部分(定義の部分)」と「暗記すべきではない部分(応用の部分)」の区別が付きにくいからです。区別が付きにくいのは、「音楽」がとても複合的な要素から成り立っているものだからです。

しかし、それをはっきり区別し、まず基本をおさえるところからはじめれば、大変効率よく勉強することが出来るはずです。

apple apple apple

まず、楽典で扱う内容を整理してみましょう。黄色い楽典の目次を開いてください。

序章・・・「音」そのものについて
第1,2章・・・楽譜や音符について
第3章・・・リズム・拍子について
第4章・・・音程について
第5章・・・音階(調・調号)について
第6章・・・和音について
第7,8章・・・音楽用語について

第6章までが「理論」の部分で、第7,8章はひたすら「暗記」する部分です。

赤で印を付けた「ここだけ覚えてしまえば、後は簡単になる!」という部分のみを解説します。それでは、「音楽用語」、「音符」、「調・調号」、「音程」の順に解説します。

spa spa spa

<楽語ゴロを用いた「音楽用語掃討作戦」(楽典第7,8章)

音楽用語(楽語・がくご)は楽典の最後に載っているので勉強がおろそかになりがちです。まずは暗記すべき「楽語」を片付けてしまいましょう。

楽語は基本的にイタリア語です。ローマ字読みすれば、だいたいその通りの発音でOKです。英単語を覚えるように、発音しながら書いて意味を確認することを繰り返しましょう。

楽語.com」では、楽語を覚えるのを助けるために、Flashを用いた教材「楽語ゴロ」を公開しています。

「legato(レガート)」とか「crescendo(クレッシェンド)」などと言った、よく耳にする楽語は徹底的に外し、第7,8章に登場する楽語を89個に厳選しました。7日間で覚えきることができるよう、曜日分けして公開しています。

例えば、土曜日に出てくるserioso(セリオーソ。意味:厳しゅくに)のゴロを紹介しましょう。

せりをーそっと厳しゅくに行う」
063

楽語ゴロのページはこちらです。暗記を憂鬱に思わず、楽しく勉強してください!

cherryblossom cherryblossom cherryblossom

<音符〜音の名前を覚える〜(楽典第1章)

さて、では理論の部分です。楽典第1章は、「音楽を扱うに当たって、こういうふうに決めました」という定義の説明部分です。すべて覚えることが望ましいですが、最低でもここで紹介することは覚えておきましょう。(ちなみに、臨時記号や音符についての基本的な説明は省略します。)

「IV音名」を開きながら読みましょう。

1)「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」を日本語で言うと、
 「ハ・ニ・ホ・ヘ・ト・イ・ロ・ハ」です。

2)ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ドをドイツ語で言うと、
C(ツェー) D(デー) E(エー) F(エフ) G(ゲー) A(アー) H(ハー) C(ツェー)です。
英語の「A(エー)」とドイツ語の「E(エー)」を取り違えないように注意しましょう。

3)各音の#はそれぞれの後に-is(ィス)を付けて、
Cis(ツィス) Dis(ディス) Eis(エイス) Fis(フィス) Gis(ギス) Ais(アイス) His(ヒス)です。

4)各音の♭はそれぞれの後に-es(ェス)を付けて、
Ces(ツェス) Des(デス) Es(エス) Fes(フェス) Ges(ゲス) As(アス)で、
Hの♭のみ、「B(ベー)」になります。
英語の「B(ビー)」は「シ」を表すので取り違えないように気をつけましょう。

5)各音の×(ダブルシャープ)は-isis(ィシィス)(例:Cisisツィシィス) 、
♭♭(ダブルフラット)は-eses(ェセス)(例:Cesesツェセス)になり、
Hのダブルフラットのみ「BB(ベーベ)」です。

音名のドイツ語読みは、これからたくさん使います。すらすらと出るように、音符をドイツ音名で歌うなどして、早く慣れましょう。

taurus taurus taurus

ピアノをやっているみなさんは「ト音記号」、「ヘ音記号」は見慣れていると思います。それぞれの名前の通り、ト音記号は「ト(=G)」の位置を(書き始めをG)、ヘ音記号は「ヘ(=F)」の位置を(2つの点を挟む線をF)表します。


ハ音記号もその名の通り、二つのくねりの中心に来る線を「ハ(=C)」とする記号です。


そのハ音記号の中心が第線上にある譜表を「アルト譜表」と呼び、第線上にある譜表を「テノール譜表」と呼びます。

ちなみに五線の数え方は一番下が「第1線」、一番上が「第5線」です。では、忘れないようにゴロで覚えましょう。

アルトさんテノールに「ーっ」て言って?」
B01

confident confident confident

<調・調号〜まず長調を完璧に!〜(楽典第5章)

次に、音楽における「調」という概念を勉強しましょう。10/12の音楽史の話の中でも書きましたが、「調」は音楽の中で対比を生み出し、緊張感を作るためにつくられた「システム(「構造」とか「制度」と言っても良いでしょう)」です。

調には2種類「長調」と「短調」があります。長調で曲をつくると「明るい感じ」に、短調で曲をつくると「暗い感じ」になるようになっています。

そのシステムを音符で表したものが「音階」です。

0810141

上が「Cから始まる長調(=ハ長調)」、下が「Cから始まる短調(=ハ短調)」です。それぞれを聞いてみましょう。
 note聞いてみましょう〜Cから始まる長調
 note聞いてみましょう〜Cから始まる短調

さて、ここで2つ覚えることがあります。

1)長調のことをdur(ドゥアー)と言い、 短調のことをmoll(モール)と言う。

「ハ長調」を「C dur(ツェー・ドゥアー)」。「ハ短調」を「c moll(ツェー・モール)」と言います。

例:G dur(ゲー・ドゥアー)=ト長調
   h moll(ハー・モール)=ロ短調
  ※長調の場合は大文字で、短調の場合は小文字で表記します。
  また、「G:」と書くとG durを意味し、「h:」と書くとh mollを意味します。

2)音階の始めの音を「主音(しゅおん)」、5番目の音を「属音(ぞくおん)」、4番目の音を「下属音(かぞくおん)」、7番目の音を「導音(どうおん)」と言う。

shoe shoe shoe

さてここで、「Cから始まる・・・」と書いてあることに気づいてください。実は、どの音から始めても良いのです。例えば、「Dから始まる長調」(=D dur)を作ってみましょう。

0810142

こうなります。Dからはじめても「ドレミファソラシド」と聞こえるようにするため、臨時記号をつけました。
 note聞いてみましょう〜D dur

このように、C以外の音からはじまる長調を作ると、臨時記号が付きます。どうせつくなら、それを左側にまとめてしまえ!と考えられたのが「調号」です。以下に示すのは長調の調号です。

0810143

上段が#系、下段が♭系と呼ばれています。さて、この調号は全て覚える必要があるのですが、ある法則にのっとって出来ているので、その法則を覚えましょう。

1)#系の長調の場合
 イ、C durの音階を書く
 ロ、属音(5番目の音)の「G」から音符を並べ直す
 ハ、並べ直した7番目の音を調号として「#」をつける

0810144

これでG durの完成。この調子で繰り返していきましょう。もう一度だけ、繰り返してみます。

0810145

これでD durの完成です。これで、調号の表・上段のC→G→D→A→E→H→Fis→Cisという順に音を導き出すことができるのと同時に、調号が分かります。

2)♭系の長調の場合
 イ、C durの音階を書く
 ロ、下属音(4番目の音)の「F」から音符を並べ直す
 ハ、並べ直した4番目の音を調号として「♭」をつける

0810146

これでF durの完成。では、もう一度繰り返します。

0810147

これで、B durの完成です。これで調号の表・下段のC→F→B→Es→As→Des→Ges→Cesという順に音を導き出すことができるのと同時に、調号が分かります。

すらすらと調号と音階が書けるようになるまで五線に向かって手を動かして訓練しましょう。これには時間をめいっぱいかけてください。

scissors scissors scissors

<音程〜音と音の隔たりを数えるゲーム〜(楽典第4章)

楽典最大の難関「音程」です。が、調号と音階が完璧に出来ていれば、実は楽勝です。

「音程」とは、「2つの音のピッチの距離を表した数字」のことです。単位は「度」です。

例を挙げて説明しましょう。音程を表す言葉である「オクターブ」という言葉を使って説明します。下の楽譜をご覧下さい。
0810148
両方「C」です。この2音は「1オクターブ離れています」。では、次の楽譜をご覧下さい。

0810149
それぞれ「C」、「F」、「Es」、「Ais」です。赤と黒のペアはそれぞれ「1オクターブ離れています」。このように、音が違っても距離は一緒だから、「1オクターブ」という同じ言葉で距離を言うことが出来ます。

さて、「オクターブ」の場合は分かりましたが、2音が異なる音だったらどうなるでしょうか?・・・音程の問題は、このような感じで「音と音がどれだけ離れているかを言い当てるゲーム」だと思ってください。

それでは、定義(ゲームルールの説明)です。とりあえず、これだけを覚えて取りかかってみましょう。

(低−高)度数ゴロイラスト
完全 土足!」「解だ!」
ファ 完全 ヨン様が三枝のマネする。ドファ〜笑
長3 う?ーは」「長さんでしょ?」
短3 味噌単三電池入れる
短6 ミド単六電池握る
長6 ドラえもん、超録画してぇ!

実際の問題に挑戦です。

08101410

(1)「ミ−ド」なので、表より「短6度」
(2)「ド−ミ」なので、表より「長3度」

(3)「ソ−レ」という表にないものがでたとき…
 イ、下の音「ソ」から始まる長音階を作る。
 08101411
 ロ、この音階の最初の音を「ド」と読み替えると、「ソ−レ」=「ド−ソ」
 ハ、表より「ド−ソ」を見て、「完全5度」
(4)「ラ−レ」は、また表にないので・・・
 イ、「ラ」から始まる長音階を作る。
 08101412
 ロ、この音階の最初を「ド」と読み替えると、「ラ−レ」=「ド−ファ」
 ハ、表より「ド−ファ」を見て、「完全4度」
(5)「ラ♭−ド」は表にない。
 イ、「ラ♭」から始まる長音階を作る。
 08101413
 ロ、「ラ♭」を「ド」と読み替えると、「ラ♭−ド」=「ド−ミ」
 ハ、表より、「長3度」
(6)この問題は、やってみましょう!答えは「あとがき」にて。

bell bell bell

今回の説明はここまでです。この後には、以下のものを説明しなければいけませんが省略します。ただ、ここまで説明した部分を完全に理解し、素早くできるようになれば、以下に羅列するものは、すんなり理解することができるでしょう。

音程
・半音広がったとき、狭まったとき(完全系・長短系の説明)
・転回音程
調
・短調の調号は、短3度上の長調(平行調)
・調号の付き方の意味(五度圏)と、属音・下属音・導音の意味
・短調の3種類(自然短音階、和声短音階、旋律短音階)
・教会旋法のつくりかた
和音
・和音の種類(名前)と、その音程関係と響き
・音階の機能と、和声の意味
リズム
・大半は実技のレッスン時に身につく事柄です。
 あえて触れるとすると・・・「L'istesso tempo(リステッソ・テンポ)」、「syncopation(シンコペーション)」、演奏時間の計算問題など。

up up up

「楽典」を勉強したことがある方は、このような順序で楽典を勉強することは「まわりくどい」と思うかもしれません。しかし、本当に楽典が音楽の理論として実感できるための最短距離を私なりに考えた結果、このようになりました。

勉強することにおいて一番残念なことのは、「勉強したけど忘れてしまった」という状況になることです。たとえ忘れたとしても、思い出せるような覚え方をするのがいいと、私は思っています。「楽語ゴロ」についても、必死に勉強したわりには、受験後は忘れてしまった…では意味がないので、インパクトの強い方法でもって覚えてほしいという気持ちから作りました。

実技の練習において「譜面をよめるようになる」ところから「ちゃんと弾けるようになる」まで時間がかかるように、楽典おいても「知識」が「実感」になるまでは時間が必要です。よい練習方法がよい演奏を生むように、楽典においても基本を押さえた「良い勉強」が、楽典攻略の第一歩です。音大生ブログRankingに投票! clip河合達人

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あとがき(閉じていますので、「続きを読む」をクリックしてご覧下さい)

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2008-10-13

【教えたいシリーズ】MIDIとデジタルオーディオは何が違う?

芸術の秋と言いますが、この時期は演奏会が多くなります。思うに、日本の夏は湿気が多いので、楽器にとってよくないからなのかな、と勝手に想像しています。

さて今日は、「音」という物理現象から、コンピュータ音楽までを網羅したお話です。感想、質問などぜひお寄せ下さい。

10/11 Max/MSPとは?読むだけで使いたくなる解説
10/12 音楽史〜現代アート・現代音楽はなぜ生まれたか〜
10/13 MIDIとデジタルオーディオは何が違う?
10/14 「楽典」を知識としてではなく実感するために

karaoke karaoke karaoke

<音は「波」である>

「ピーポーピーポー…」とサイレンを鳴らす救急車が目の前を通り過ぎ、遠くなっていく瞬間に、その音はどんどん低くなっていきます。

音というのは不思議な、「波」の性質を持つ自然現象です。救急車の例は「ドップラー効果」という名前がついていて、波を性質をもつものに起こります。

波と波が重なり合うとき、その波の高さは足し算で計算できます。例えば、流れるプールで盛り上がった波と波がぶつかる所に居ると、ものすごく盛り上がる高い波になるのを想像できますよね。ということは…、盛り上がった波と、へこんだ波がぶつかると、どうなりますか?打ち消しあって、ほとんど水面は動かなくなります。

これを音で再現することが出来ます。ある音がスピーカーから鳴っているときに、別のスピーカーから、打ち消しあうような逆の波形の音を出すと、音が消えます。これは、実際、騒音対策などに利用されています。実感してもらうために、みなさん自身で体験できるようなプログラムを作りました。

081013

clipダウンロード 081013.zip (50.4K)

このプログラムは「左右2つのスピーカーから、お互いを打ち消しあう波形の音を鳴らし、実際に音が消えるのを実感する」ためのものです。スピーカー2台が必要です。(ヘッドフォンなどの耳に直接音を入れる機器では体験できません)。

Max/MSPについては10/11の記事をご覧下さい。Max/MSPランタイムをインストールし(インストール済の場合はしなくてOK)、上のファイルをダウンロードします。ダウンロードしたファイルを展開し、[081013.maxpat]を開いてください。それでは、操作方法を説明します。

イ. (1)の[read]をクリックし、オーディオファイルを読み込みます。同梱の[081013.wav]でもいいですし、WAVファイルかAIFFファイルならお手持ちの物でもOKです。

ロ. (2)の赤色の中をクリックし、×マークをつけます。これで、最初に読み込んだオーディオファイルが、左チャンネルから再生されます。

ハ. それでは、実験開始です。(3)の灰色をクリックすることで、右チャンネルから打ち消し合う音を再生します。どうですか、音量が極端に小さくなったのがわかりますか?

ニ. 今度は(4)の灰色をクリックして、×マークを消しましょう。これで、左チャンネルからの再生が止まります。すると、打ち消しあいがおこらなくなるので、また大きな音で聞こえます。(3)と(4)を交互につけたり消したりしてみましょう。

ホ. 音が出ない場合は、まずスピーカーがしっかりと接続されているかを確認してください。また、ボリュームコントロールなどで音量がミュート・最小になっていないか確認してください。それでも駄目な場合は、(5)をダブルクリックしてください。[DSP Status]という画面が出てきますので、[Driver]の欄をクリックし、適当なものに変更してみてください。

ヘ. (6)のつまみを動かすことで、ボリュームを変えられます。

同梱の[081013.wav]を読み込むと一番わかりやすいと思います。理論上はまったく音が聞こえなくなるはずですが、壁などに反射する音があるため、完全には音が消えません。しかし、音が痩せて小さくなるのは実感してもらえたと思います。

eyeglass eyeglass eyeglass

<コンピュータは「数字」だけを扱う機械>

コンピュータで音楽を扱う話をする前に、コンピュータのことについて少しお話します。

ここで、ショックなお知らせです。実は、「コンピュータは”数字”だけを扱う機械です」。…不思議に思うことでしょう。「だって、こうやって文字を表示できるじゃない!」と言われそうです。

実は、この文字でさえコンピュータ内部では数字として扱っています。下の表をご覧下さい。

 12345
1
2
3
4


         

これは今、私が適当につくった表です。「あ」=「1,1」、「い」=「1,2」、「う」=「1,3」、…「て」=「4,4」、「と」=「4,5」というふうに数字に置き換えてみました。小学校の頃、友達同士でつくった暗号表みたいですね。

この表に従った場合、「さつえい」という文字は、コンピュータには「(3,1)(4,3)(1,4)(1,2)」と記憶されるのです。このように、コンピュータは、あらゆることについて、数字に置き換える表を持ち、数字だけを記憶します。

一見面倒くさそうですが、数字だけを扱うことで機械の構造が簡単になるので、コンピュータを作った人がそうしたのです。

では、「音」はどうやって表せばいいでしょうか。「文字」は簡単に表にすることができましたが、先ほど説明したとおり音楽は「波」なので、ちょっとやっかいです。

smile smile smile

<波形を数字で表す>

波を数字におきかえるために、まず、グラフで表します。

0810132

緑色の波形を、コンピュータが理解する「数字」にするために、以下のような表をつくります。横がx軸、縦がy軸。y軸の値は整数とし、近い方の数字をとります。

x軸 0 1 2 3 4 5 6 7 8910111213141516
y軸 0 2 3 4 4 4 3 2 0-1-3-4-4-4-3-20

コンピュータはこのように、波を数字に置き換えてたあと、

(0,0)(1,2)(2,3)(3,4)(4,4)(5,4)・・・

といった具合に記憶していくのです。

さて、ここで気づいてほしいことは、「波形を区切った」ということです。このような数字の置き換え方をすると「連続的」でなくなります。この非連続的であることを「デジタル」と言います。

さてここで、デジタルの「非連続である」ということがどういうことか、実例を挙げます。先ほど出来た表を見ながら、波形を作り直してみましょう。小学校でやったグラフの練習問題のように、点を書いてから、線で結びます。

線の結び方が少し特殊です。線は斜めに引かず、x軸方向に伸ばしてから、次の点へ行きます。これはパソコン内部での決まりです。

0810133

オレンジ色で示した波形は、もとの緑色の波形よりいびつになってしまいましたね。というより、ほとんど違いますね。区切り方がおおざっぱでしたからこうなりました。例えば、先ほどの2倍区切って表を作ったとします。まず、表が以下の通り。

x 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.04.55.05.56.06.57.07.58.0 8.5
y 0.0 1.0 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.0 4.04.03.53.53.02.01.50.50.0 -0.5
9.0 9.5 10.0 10.5 11.0 11.5 12.0 12.513.013.514.014.515.015.516.0
-1.5 -2.0 -3.0 -3.5 -3.5 -4 -4 -4-3.5-3.5-3.0-2.5-1.5-1.00.0

この表から、波形を作り直してみると・・・

0810134

このようになります。まだいびつですが、緑色の波に近づいたのが分かると思います。これを限りなく多い回数で区切ることが出来れば、もとの波形とほぼ同じ物をつくることができます。

これではじめて、コンピュータで音を扱うことが出来るようになります。これを「デジタルオーディオ」と言います。

現在デジタルオーディオの標準的な音質である「CD」の音は、x軸方向に1秒あたり44,100回、y軸方向には65,536回区切った数字から生み出されている音波です。

foot foot foot

<音は波。では、音楽は?>

こうして、コンピュータで「音」を扱うことが出来るようになった、ということは「音楽」も扱うことができるようになったということです。なぜなら、「音楽」は「音」だから、「音楽」も「波」なのです。

ただ「音楽」には、「音」にはない性質があります。それは「楽譜がある」ということです。

楽譜は自然現象ではありません。だから、波ではありません。楽譜は、拍子・調号・演奏速度・音符・強弱などという情報が記されている「文字のようなもの」だと言って良いでしょう。楽譜を数字に置き換えて記憶したものをMIDIファイルと言います。

具体的に例を示してみましょう。それでは、以下のように「数字に置き換える」とりきめをしたとします。

0810135

「4分音符のミ」=「3,2」、「8分音符のラ」=「6,3」といった具合です。それでは、以下のような楽譜は、どのように数字に置き換えることが出来るでしょうか。

0810136

(5,1)(6,2)(5,3)(3,4)(2,4)

となりますね。もちろん、「楽譜」にはピッチと音価(=音の長さ)だけではなく、複合的な情報が含まれていますから、こんなに単純ではありませんが、これがMIDIのイメージです。(ちなみにMIDIはMusical Instrument Digital Interfaceの略で、訳せば「楽器のためのデジタルな規格」といったところです。)

music music music

ここまでの説明で、「デジタルオーディオ」と「MIDI」が根本的に違うということを理解して頂けたでしょうか?デジタルオーディオは音波を数字にしたもの、MIDIは楽譜を数字にしたものです。

その違いによって、どのような特徴があるかを説明します。

デジタルオーディオは、記録する時間が長ければ長いほどデータが増えます。MIDIは音符が多いほど(楽譜情報が多いほど)データが増えます。デジタルオーディオは、CD音質の場合1秒で4万以上のデータになりますが、MIDIにおいて一秒あたりにそんなに楽譜情報はないので、MIDIファイルは大変軽いデータになります。

デジタルオーディオは波形なので、再生スピードを変えると、ピッチが変わってしまいます(2倍速で再生すると、オクターブ高い音で鳴ってしまう)。MIDIは楽譜情報なので、転調したりとか、音の間違いを修正することが簡単ですし、ピッチをかえずに再生スピードを変えることも簡単にできます。

MIDIは楽譜情報なので、「音源」と呼ばれる、あらかじめ用意された音がないと音として聞こえません。「音源」にもいろいろな種類があるので、再生環境によって、出てくる音が違います。デジタルオーディオは波形そのものなので、どこで再生しても同じ音です。

・・・などなど、挙げればきりがないのですが、それぞれに特徴があり、実際に身近なところで使われています。関連する単語を挙げてみましょう。

MIDI…カラオケ、携帯着メロ、エレクトーンのフロッピーディスク、電子ピアノ・電子ドラムなどの電子楽器
デジタルオーディオ
…CD、MP3、MD、DVD、携帯着うた、USBオーディオ、S/PDIF接続、デジタル放送

rvcar rvcar rvcar

DTM(デスクトップミュージック)が広く受け入れられるようになった理由は、MIDIが普及したことが大きな要因です。パソコンが現在のように性能が良くなかった10年前、デジタルオーディオ処理はまだ大変な負担でした。MIDIは、先述のように「軽いデータですむ」点と、「編集の容易さ」により、楽曲制作に広く利用されるようになったのです。

今では、デジタルオーディオも簡単に編集できるほど高性能なパソコンが一般化しました。技術はさらなる発展をとげ、例えば、MIDIで操作するデジタルオーディオ音声合成ソフトウェア『初音ミク』や、DAW(Digital Audio Workstation)と呼ばれるMIDIとデジタルオーディオを統括したシステムが生まれ、それぞれが融合して区別が付かなくなってきています。

しかし、何事を勉強するにも、基本は大事です。この区別をしっかりと理解しDTM・コンピュータ音楽を扱う人が増えることを願います。音大生ブログRankingに投票!

明日は”「楽典」を知識としてではなく実感するために”と題して、効率よい楽典の勉強法について書きたいと思います。ようやく本家サイトの「楽語ゴロ」について言及できます…!笑 お楽しみにclip 河合達人

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2008-10-12

【教えたいシリーズ】音楽史〜現代アート・現代音楽はなぜ生まれたか〜

今日も、私が大学4年間で学んだ「面白い!」と思ったことを、誰にでもわかりやすく書いていこうと思います。感想、質問などぜひお寄せ下さい。

10/11 Max/MSPとは?読むだけで使いたくなる解説
10/12 音楽史〜現代アート・現代音楽はなぜ生まれたか〜
10/13 MIDIとデジタルオーディオは何が違う?
10/14 「楽典」を知識としてではなく実感するために

cat cat cat

みなさん「現代音楽」を聞いた事があるでしょうか。聞いたことがある方は、「理解できない音楽」であるとか「メロディーがあるようなないような不快な音楽」などといった、あまり良いイメージを持っている方は少ないかもしれません。

理解されない理由の一つが、現代音楽においては「無調」の音楽がつくられることが多いということにあります。「無調音楽」の対義語は「調性音楽」です。普通に耳にすることが多い音楽(クラシック音楽、ポップスなど)が「調性音楽」です。「無調」の意味については後で触れるとして、調性音楽の話を進めたいと思います。

例えばギターでビートルズの曲を弾くと、「この曲はキーが"E"」という様な言い方をします。クラシックでも「ベートーヴェン交響曲第9番"ニ短調"」などと言います。この「調(キー)」という概念が音楽の中での対比を作る役目を担っています。

芸術においては何かを表現するために「対比」が必要になります。対比をすることによって「緊張感」が生まれ、聴衆はそれにひきつけられるのです。緊張をすると、「緩和したい」と思うのが心理で、それを求めるから、その曲を「聞きたい」という気持ちが生まれる、という仕組みになっています。

小学校の時、お辞儀の音楽(3つの和音)がありましたよね?
「チャーン(気をつけ)・チャーン(礼をする)・チャーン(戻して気をつけ)」
 note聞いてみましょう-1

1つめの和音が鳴り、2つめの和音が響いた後に…
3つめの和音がいつまでも鳴らなかったら!
 note聞いてみましょう-2

3つめの和音を聞きたくてしょうがない衝動にかられるでしょう。
 note聞いてみましょう-3
解決したときの得も言われぬ安心感を感じられるでしょうか。これが音で表される緊張と緩和です。これが複雑に絡み合い、音楽になります。

音楽の歴史は、この「緊張感」を追い求めていく歴史とも言えます。では、「現代」という時代に流れ着くまでの、おおまかな流れをこれから説明します。

fish fish fish

<18世紀後半〜>

芸術作品には、その当時の生活スタイルが作品に反映される場合が多いです。例えばW.A.モーツァルトの音楽は、その当時の人たちの生活サイクルである、

朝は安心できる「家」で起き、昼は「仕事場」に出かけて緊張をし、夜また安心できる「家」に戻ってくる。

という「家」と「仕事場」という対比が、曲にも表されています。有名な「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」(セレナーデ第13番ト長調K.525第1楽章)を聞くと、曲を大きく「A-B-A'」と分けることができます。(最初のAは繰り返しをするので、「A-A-B-A'」)
 note聞いてみましょう-4(YouTube)

Bの部分がどこだかわかりますか?3分28秒以降ですね。ちょっと暗い感じでどこへ行き着くかわからないような部分がBの部分です。曲全体としてはほんの少しですね。これが当時の「緊張」の部分です。4分0秒からまたAに戻ってきます。

でも、今の我々は意識して聞かないと、このB部が緊張の部分であるということがわからないと思います。我々の耳はモーツァルトの音楽を単なるBGMとして聞けるようになってしまっているのです。(参照したYouTubeの映像は随分わかりやすく抑揚をつけた演奏です)。

それはなぜかというと、時代が下ってくると、例えば皆が皆、家のある生活をしているわけでもなくなってきたりして、A-B-Aのような単純な形式に当てはまらなくなってきます。また、慣れによって緊張して聞けていたものが、だんだんと普通になってきてしまうのです。そして、さらなる緊張を求めて作品を作り続けます。この衝動により、歴史が動きます。

dog dog dog

<19世紀後半〜>

モーリス・ラヴェルのバレエ音楽「ボレロ」は聞いたことがあると思います。

    「タン・タタタ/タン・タタタ/タン・タン、
     タン・タタタ/タン・タタタ/タタタタタタ」


というリズムに、2パターンのメロディがずっと続いて行く音楽です。それだけを、なんと15分間も続けることによって、緊張感を最後まで持続して行くという、聴衆をじらして、じらして、じらし倒す音楽です。
 note聞いてみましょう-5 Part1(YouTube)
 note聞いてみましょう-5 Part2(YouTube)
カラヤン指揮の映像です。途中で切れて2分割なのが残念ですが、冒頭の緊張感のすさまじさがこの曲の全てを物語っています。後半の、最後までのクレッシェンドが、ものすごい効果的に聞こえるのがわかります。まだ大きくなるのか、まだ大きくなるのか、と、ものすごい緊張感を抱かせ、華々しく終わります。(ボレロは1928年に作曲されているので年としては20世紀ですが、調性音楽なので19世紀の音楽に分類しました。)

ただし、モーツァルトのようなわかりやすい感じとは性質が違うことは、聞いて理解していただけると思います。

confident confident confident

<20世紀>

音楽における「調」の概念は、作曲家にとって信じられる「神」に等しいものでした。

19世紀末に発表されたニーチェの論文『ツァラトストラはかく語りき』に出てくる「神は死んだ」という有名な言葉があります。ここまで時代が下ってくると、音楽は「調性」で緊張感を生み出し表現することに限界がきていました。しかし調性は「神」という認識でしたから、作曲家は率先してそれに目を向けることはできませんでした。

そこに、ニーチェが先んじて発した「神は死んだ」という言葉がその状況を払拭し、新たな方向性に気づかせてくれます。これは音楽に限らず、美術・文学など芸術全般に言える事で、現代アートの発端と言っても過言ではないでしょう。

そして、20世紀に入りいよいよ作曲家は「調性」を脱ぎ捨て、さらなる刺激を求め、「無調」の曲生み出すようになります。ちなみに「無調」という言葉は「調が無い」という意味であり、「一本調子で無調」という意味ではないのでご注意を。

音楽では「調性音楽」から「無調音楽」へ。美術では「写実的」なものから「抽象的」なものへ(例:ピカソの作品)。文学では、主人公が「名高いヒーロー」から、「どこにでもいる普通の人」になったり(例:フランツ・カフカ『変身』。しかもハッピーエンドではない)などと、神(常識・定石)とも言えるものを打ち壊し、神の為ではなく、「何か」の為に表現・創作をする必要が出て来たのです。

「何か」とは何なのか、それは創作者それぞれの思うところなのです。皆が同じ何か(=神のようなもの)のために創作をするという必要、必然性がこの現代にはなくなってしまいました。

しかし、今も昔も変わっていない事は、「目的」があって作品をつくる、ということです。その「目的」が聴衆にわかる音楽、それが「良い作品」と言われるのです。…万人に認識される「美しさ」はあとからついてくるのです。

当然ですが、モーツァルトやベートーヴェンの音楽が「現代音楽」であった時代があったわけです。例えば、ベートーヴェン「交響曲第9番」は全4楽章からなりますが、第4楽章は当時難解すぎて、再演の際演奏されなかった、という逸話があります。現在ではその第4楽章を聞いても何も不思議に思わないし、美しいと感じることができると思います。

happy02 happy02 happy02

とはいっても…せっかくですから「現代音楽」を楽しみたいですよね?

現代という時代になって、調性を脱ぎ捨てた作曲家は、それにかわるものがないかと、いろいろなことを考えました。例えば楽器の奏法であったり、作品という概念についてであったり、と様々ですが、共通しておおまかに言えることといえば「音の響きそのもの」に関心がうつった、という事でしょう。

だから、現代音楽を聴く際は、「音楽にはメロディーがある」とか「規則正しいリズムに乗っ取っている」などといった固定観念を全て排除し、音の響きそのものをきくようにしてみてください。また、その曲の特徴的なものを一つみつけて、それを追っていってください。これだけで、随分と楽しめるようになると思います。

では、現代音楽の作品を紹介したいと思います。私が好きで、かつ、わかりやすく面白い曲を出します。

・エドガー・ヴァレーズ作曲「イオニザシオン(電離)」(1931年)
 note聞いてみましょう-6(YouTube)
西洋音楽史上初めてのパーカッション・アンサンブル曲です。「音の響き」が考えられるようになったからこそ、打楽器だけの音楽が生まれたのです。グチャグチャに演奏しているように見えるかもしれませんが、とても計算しつくされています。特徴的な「タカタカタッ」というリズムだけでも追ってみると面白いと思います。

・ルチアーノ・ベリオ作曲「セクエンツァIII」(1965年)
 note聞いてみましょう-7(YouTube)
セクエンツァ・シリーズは楽器の奏法の限界に挑戦した曲集です。楽器が奏でられる響きの可能性を広げるために作曲されました。その3曲目であるこの曲は女声のために書かれています。「歌う」という固定観念を取り払って、喋ったり咳をしたりと、音色の追求なのです。歌っているのは、夫人のキャシー・バーベリアンです。

また、電子音楽・コンピュータ音楽という手法も、新しい「音の響き」を求めていた作曲家の目にとまったことにより、可能性が模索されるようになったのです。

・「DApendulum」
 note聞いてください(YouTube)
手前味噌で大変恐縮ですが、私が作ったコンピュータ音楽作品です。こんなところに並べていい作品ではないのですが…。フルートとMax/MSPとオブジェのための作品です。デジタル機器に支配されている世の中に警鐘を鳴らそうと、吊されたノートパソコンを揺さぶるオブジェの動きをきっかけに、奏でるフルートの音が音響処理されていく、実験的な作品です。詳しくは10/15に書く予定です。

chick chick chick

現代音楽を聴く機会がありましたら、ぜひこれらのことを思い出してくださいね。

もうひとつ、書き加えなければいけないことは、このお話は「西洋」という一地域の音楽の歴史であるということです。別の地域では独自の歴史が流れています。

歴史を学ぼうとするときは、まず「大まかな歴史の移り変わり」と、「なぜ歴史が動いたか」という観点で勉強すると、すんなり理解できます。「現在の状況は、過去にどういうことがあったからなのか」を知ることも楽しいです。大まかにつかんだ後、詳しく勉強しましょう。細部から勉強してしまうと関連がわかりにくくなります。音大生ブログRankingに投票!

明日は、「MIDIとデジタルオーディオは何が違う?」と題して、「音とは何か」に触れつつ、書きつづってみたいと思います。お楽しみにclip 河合達人

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あとがき(閉じていますので、「続きを読む」をクリックしてご覧下さい)

続きを読む "【教えたいシリーズ】音楽史〜現代アート・現代音楽はなぜ生まれたか〜"

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2008-10-11

【教えたいシリーズ】Max/MSPとは?読むだけで使いたくなる解説

今日から4日連続で【教えたいシリーズ】を読み物として書きつづっていきたいと思います。

10/11 Max/MSPとは?読むだけで使いたくなる解説
10/12 音楽史〜現代アート・現代音楽はなぜ生まれたか〜
10/13 MIDIとデジタルオーディオは何が違う?
10/14 「楽典」を知識としてではなく実感するために

私が大学で勉強をして、面白い!と思ったことをぜひ誰かに伝えたいという気持ちのもと、誰にでもわかりやすく書いていこうと思います。感想、質問などぜひお寄せ下さい。

cancer cancer cancer

第一回目の今日は「Max/MSP」についてです。最近このブログで頻繁に登場するこの単語は、コンピュータ音楽用ソフトウェアの名前です。今日のお話はコンピュータで音楽制作をしたことがない人は少し難しいかもしれませんが、ゲームかパズルだと思って読んでみてください。

「Max/MSP」がどういうソフトであるか、ということを言葉で説明することは、とても難しいことです。「音楽用プログラミング言語」と言うことは出来ますが、よくわからないと思います。ですから、実際の操作を見てもらうことが一番の説明になるでしょう。

では、まず最初に目標を設定。「1秒に2000ずつ増える関数」をMax/MSP上で表します。

1Max/MSP Version5のアイコン(MacOSX版)

ソフトを起動し、[File]→[New Patcher]をクリックします。次のような画面が出てきます。

2

この「パッチャー」と呼ばれる白紙状態の画面に、いろいろなパーツを置き、組み合わせながら、面白いことをします。

パッチャー上でダブルクリックすると、次のような枠が現れます。

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今回は「object(オブジェクト・ボックス)」、「message(メッセージ・ボックス)」、「button(ボタン)」、「number(ナンバー・ボックス)」を使います。それぞれクリックすると、パッチャー上に現れます。

では、「object」をクリックして、パッチャー上に表示させます。
カーソルが点滅しているところに「clocker」と書きます。入力は全て半角です。

4

オブジェクト・ボックスの中に「clocker」と書くことで、このボックスは「1秒間に1000数えるタイムウォッチ」の機能を持つことになります。これはこのソフトの決まり(定義)です。

「オブジェクト・ボックス」は、その中に書く文字によって色々な機能を発揮するボックスです。

つぎに、「number」を出し、パッチャー上に表示。[clocker]の左下出口からドラッグをし、ナンバー・ボックスの左上入口付近で離します。線が自動的に出て、繋がります。

5

こんな調子で線を繋ぎながら、つくっていきます。[clocker]は左上に[button]を繋ぐことで機能します。同じ調子で[button]を表示させ、線を繋ぎます。

6

ここで、ちゃんと[clocker]が動くかのテストです。パッチャー左下の[Lock]をクリックしたあと(↓画像参照)、

7クリックする前の状態。クリックすると、パッチャー上の点が消える。

「button」をクリックしてみます。ナンバー・ボックスに刻々とかわる数字が表示されます。

8

「Lock」をクリックする前(パッチャー上に点がある状態)を編集モード、「Lock」をした状態を実行モードと言います。

scissors scissors scissors

ここまでで「1秒間に1000ずつ増える関数」ができあがりました。目標は「1秒間に2000」ですから、これを2倍すればいいですね。

「Lock」をクリックし、パッチャー上の点が見える「編集モード」の状態にしてから、下のように組み立てます。

9

上から順に「button」、「object(”clocker”と入力)」、「number」、「object(”* 2”と入力)」、「number」です。

「*(アスタリスク)」は「かけ算」の意味です。「*(アスタリスク)、半角スペース、掛ける数」と入力します(これは定義)。

これで完成です。実際に動かすために「Lock」をクリックし実行モードにしたあと、一番上の[button]をクリックすると、「1秒に2000ずつ増える関数」が実行されます。

happy01 happy01 happy01

さて、この状態だと、いつまで経っても数字を数えるのが止まりません。では目標設定。「5秒経ったら止まる仕掛けをつくる」ことをしてみます。

10

これが答え(のひとつ)です。「”* 2”オブジェクト」の左下に、オブジェクト・ボックスで「sel 10000」と入力しました。selは「select」の略で、10000を選ぶ、ということです。10000という数字が入力されたら、左下から信号を出すという機能があります。この信号のことを「バン(bang)」と言います。

一番左下にあるのは、「message(メッセージ・ボックス)」に「stop」と入力したものです。これは、「clockerオブジェクト」の左上に繋げます。

「clockerオブジェクト」は「stop」メッセージを受け取ると、数字を数えるのをやめ、「bang」メッセージを受け取ると、数え始めます(定義)。冒頭で、clockerオブジェクトを動かすために、「button」をつなげましたね。「button」は、クリックすると「bang」が出る仕掛けになっているのです(定義)。

今回、「selオブジェクト」を、「* 2オブジェクト」から繋ぎましたが、例えば、「clockerオブジェクト」から繋いでもOKだということがわかるでしょうか。その場合は「sel 5000」になりますね。

11左右とも機能は同じ

このように、同じ機能を実現するためのアプローチはたくさんあります。今回は「clocker」オブジェクトを使用しましたが、例えば「line」オブジェクトなどを使用しても同じ事ができます。オブジェクトの種類を色々学び(定義の勉強)、その組み合わせを考え(定義の応用)、自分の思い通りのプログラミングをすることができます。

さて、ここで初めて「プログラミング」という言葉を用いましたが、どうですか、プログラミングしているという感覚ですか?小難しい文字列を並べるというイメージのプログラミングとは違った楽しさがあると思います。「線でつないでいく」という直感的な操作が印象的だと思います。

catface catface catface

では最後に、ちょっとしたゲームをつくることにしましょう。目標設定「5秒スタジアムをつくる」。ご存知の方も多いと思います、5秒きっかりでストップウォッチを止めるゲームです。

なんてことはないですね、今まで使ったことを駆使して、これで完成です。

12

左の[button]をクリックした後、いいかなと思ったところで[stop]をクリック。5000が出れば成功!(ナンバー・ボックスを見ながらやっても、かなり難しいです。1秒間に1000数えてますから、マウスクリックに1000分の1秒の精度を求められます)

これだけだと味気ないので、「判定をする」プログラムを付け加えましょう。

13

オブジェクトの説明をします(これらは定義)。

「/ 10」オブジェクト・・・「/(スラッシュ)」は「割り算」の意味です。「/(スラッシュ)、半角スペース、割る数」と入力し、左下より計算結果が出力されます。

「== 500」オブジェクト・・・「==」は「イコール」の意味です。「==(イコールイコール)、半角スペース、判定する数」と入力し、左下より正しい場合は「1」、違う場合は「0」が出力されます。

「makenote」オブジェクト、「noteout」オブジェクト・・・詳しく説明しませんが、これらのセットでMIDI音源を鳴らすことが出来ます。もともと音楽のためのプログラミング言語なので、音や映像などを生み出すオブジェクトが多数用意されています。(ちなみにこのパッチでは、「ベロシティ(音量)120、デュレーション(長さ)200ミリ秒、チャンネル10で出力」する設定になっています。clockerオブジェクトが動いている間ノートナンバー78を鳴らし続け、5秒の時だけノートナンバー49が鳴ります。MIDIの説明は明後日します。)

「t」オブジェクト・・・「trigger(トリガー)」の略で、信号を出す順番を指定します。詳細説明省略します。

「lcd」オブジェクト・・・「判定画像を表示させる領域」という矢印がでている枠の部分です。オブジェクト・ボックスに「lcd」と入力すると、この形に変わります。この領域には文字を書けたり、マウスで絵を描けたりする、画像を扱うためのオブジェクトです。今回は事前に用意した2枚の画像を表示させるために使用しました。5秒きっかりで止められたときは、OK画像が出るようにしました。詳細説明省略します。

さて、以上のオブジェクトを用いて、「100分の1秒の精度で、5秒きっかりを出すためのプログラム(判定画像付き)」をつくることができました。それではこれから、実際にみなさんのパソコンで動かすための説明をします。

note note note

Max/MSPで作った「パッチ」は配布することができます。ただし、パッチのデータだけがあっても、それを動かすソフト(つまりMax/MSP)がないと動きません。

今私がやったようなプログラミングを行うためには「Max/MSP」を購入する必要がありますが、パッチを実行するだけならば、無料の「ランタイム」をダウンロードし、インストールすればOKです。

Max/MSPの発売元である「Cycling'74社」のサイトにアクセスし、ランタイム(Runtime)をダウンロードします。

1. http://www.cycling74.com/downloads/max5 にアクセス。
2. Macを使っている人は「Current Mac Version」、
  Windowsを使っている人は「Current Windows Version」をクリック。
3. 「Max5.0.x Runtime」をダウンロード。
4. ダウンロードしたファイルを実行し、インストール。

ここまで出来ましたか?それでは次に、今回私がつくったパッチをダウンロードしてください。

clipダウンロード 081011.zip (35.9K)

これをダウンロード後展開し、「081011.maxpat」を実行してください。100分の1秒精度とはいえ、5秒を出すのはかなり難しいです。自分で作っておきながら、5秒を出せた瞬間「やった!」と叫んでしまいました(笑)。

※Max/MSP Version5を使う為には、お使いのパソコンが以下の条件を満たしていることが必要です。
 Windows機の場合:WindowsXPまたはVista。メモリ1GB以上。
 Mac機の場合:OSX10.4以降。メモリ1GB以上。
 また、Cycling'74社ダウンロードページから通常版(Max5.0.x with documentation)をダウンロードすれば、30日間無料でプログラミングも出来る状態で使えます。

  

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昨今の技術のめざましい発展により、コンピュータが高性能になり、MIDIやデジタルオーディオを扱えないパソコンは皆無になりました。特殊な機器を購入せずとも、家庭にあるパソコン1台で音楽制作ができてしまいます。音楽制作が身近になり、音楽教育を受けたことがない人でさえもDTM(デスクトップミュージック)を駆使し、音楽をつくることができます。

そういう人たちが増えたからこそ、Max/MSPというソフトの重要性が大きくなってきていると思います。Max/MSPはプログラミング言語なので、DTMで行う「できあいのシーケンスソフトや編集ソフトを使う」という行為ではなく、「自身の目的のためにプログラムを組むことが出来る」点が特長です。

プログラミングといっても、上記のようにオブジェクトを線で結んでいくというわかりやすい手法なので、誰もが取りかかることができます。もちろん、これの基本はMIDIであったり、デジタルオーディオ処理であるため、DTMのハウツーを知る必要はあります。

しかし、DTMでは「曲を仕上げなければならない」という最終目標になってしまいますが、Max/MSPの場合はそれが無限大に存在します。私の場合は「音そのものの響き」を生み出すことができる楽しさを実感して、制作をしています(今回は説明しませんでしたが、「リアルタイムな音響処理」、「音を検知して何かを動かす」などということが簡単にできます)。

より自分の求めている音楽・音を追求したいと思っている人、プログラミングを始めたいと思っているけどなかなかとっかかりがない人、など、たくさんの人にMax/MSPを触ってほしいと思います。音大生ブログRankingに投票!

明日は、”私が大学で勉強している「現代音楽」の作曲から考える音楽史のお話”です!お楽しみにclip 河合達人

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あとがき(閉じていますので、「続きを読む」をクリックしてご覧下さい)

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